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志村史夫著 「木を食べる」

志村史夫著 「木を食べる」を読了。

散歩してたら木って食べられるんじゃないかと、ふと気になって調べてみた。
そしたらそのものずばりな本があったんで購入。

結論から言うと、種類によっては木は食べられるみたい。
木の主要な成分は、セルロース、ヘミセルロース、リグニンなどの食物繊維で、いずれも人体に害はないようだ。
ただ食物繊維なので、いずれも胃では消化できず(大腸では腸内細菌によりある程度消化されるらしい)、エネルギー源としては期待できない。
この本では木をパウダー状にして、クッキーや麺に混ぜ込んだり、お茶にして食べてたな。
麺なら10%, クッキーとかなら25%位までなら違和感なく受け入れられたようだ。
発酵させたらセルロースとかを糖に分解できないのかな。
化学のことは全然知らないんで、また調べてみよう。

著者の志村史夫氏は元半導体の研究者のようだ。
彼の物理的、化学的な知識をバックグラウンドに樹木に関することを考察する大変面白い本だった。
木が食べられるかの検証自体も面白かったが、その前章として書かれた、樹木のうんちくや著者の樹木に対する主張、樹木を使ったちょっとした実験とかも興味深いものだった。

著者のバックグラウンドのおかげか、読んでいて気になった個所に適宜補足があるのがうれしい。
例えば、樹木の抗菌作用を確かめるための実験として、食パンのみを密閉した瓶と、食パンと木材を密閉した瓶を比べて、食パンと木材を密閉した瓶の方がカビが繁殖しにくいことを確認していた。
単純に木材の吸湿効果でカビの繁殖が防がれたんじゃないかと疑問に思ったのだが、のちに食パンと乾燥剤を瓶に密閉した際の結果も併せて示してくれたりと、痒い所に手が届く感じだったな。

肩肘はらずに読める良い本だった。

2018/09/10 追記
セルロース分解して酒にするのは割と最近に成功してるみたい。
https://www.asahi.com/articles/ASL4V5FXKL4VUJHB00G.html
実用化したら飲んでみたい。

藤井恵介, 玉井哲雄著 「建築の歴史」

藤井恵介, 玉井哲雄著の「建築の歴史」を読む。

Oculus Rift買ってから環境周りのモデリングとかに興味が出てきて、
最近そこら辺のこと調べてる。

特に寺社周りの情報が欲しくて「建築の歴史」を読んだんだけど中々面白かった。
竪穴式住居に始まり、中国の建築の影響を受けながら独自に発展していった日本の建築についてよくまとまっていると思う。

特に気になってた、奈良から平安にかけての建築について詳しく書かれてて満足。
個々の建築だけでなく、都市全体の成り立ちなどにもページを割いていてくれているのも良かった。
西洋建築が入ってきた近代以降はちょっと駆け足な感はあるかな。

渡辺照宏著 「日本の仏教」

空海の風景が面白かったから、その流れで渡辺照宏著の「日本の仏教」を読む。

日本の仏教について、その成り立ちをインド仏教からの変容を通して語ったような内容だった。
この手の書籍に著者の主義主張が盛り込まれてたりするのは苦手なんだけど、
この本に関してはその主義主張のおかげで痛快で読みやすくなってたな。

排他的で非寛容な教義の宗派を強く批判して、
戒律を重んじ、また社会的な事業などを積極的に行い、民衆に利した僧を高く評価する著者の価値観が心地よい。

この書籍で批判されていた宗派については、少し詳しく調べて批判が妥当か判断したい。